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夜を渡る旅券

2019年4月発表 12曲収録



ヴォーカルを女性のみに絞って統一感を狙う一方、曲調としては王道メロディック・スピードメタル、バラードやダンスポップ、ジャズ等やりたい事全部放り込んだ音の宝石箱的アルバム。
コンセプトは「楽園」シリーズの前日譚を描いたもの。
コンパクトな曲から14分の大作まで、バラエティ豊かな構成になっている。

Guest Vocalists :

餅月くるみ
https://rttk2511215.wixsite.com/maedaemma
Tr. 2,4,6,8,9,11,12


uco(ヒメゴト。)
http://himegoto.sakura.ne.jp/
Tr. 3,5,7,10



収録曲:
01辞令(Intro)
02遠ざかる世界
03遊星ヒト型機構
04星間寝台特急
05天蓋の瞳
06星屑邀撃機
07ホテル・テレスコープ
08カタパルト
09未踏の空で
10シラー・シベリカ
11自動機械達の夜
128つ目の海で

曲目解説

辞令(Intro)
 
 完全な人間として製造された少女ゼーヴァは今、生まれ育った養育施設から、軍の基地へむけて旅立つ。かつては華々しく行われてきた出立の式典も、戦線の後退と予算の縮小によっておざなりなものになってしまった。施設最後の出身者もぞんざいに扱われ、自殺同然の辞令が下る。 「汝、単身敵地中枢へ至り、和平交渉を取り付けよ」
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 テープとカセットのノイズをどうやって作るか考えた末、リサイクルショップでテープラジカセのジャンク品を買うという手法(?)に落ち着いた。 盛大な軍楽隊を安っぽい音で鳴らすと胡散臭さが良い感じ。

 

遠ざかる世界
 
ストレートなメロスピで、このアルバムのコンセプトストーリーを鳥瞰図的に眺める曲。
物語の始まりから終わりまでが詰まっているという意味で楽園~の「光の演算」同じ役割に当る。
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 最初某イベント用に作った音源で発表した後、アルバム収録に当ってVo.以外全楽器を録りなおした。マイルドかつ心地よい音圧でSPARESPINE的に最も”新しい”音になっている。
 

遊星ヒト型機構
 
「遠ざかる世界」と同じタイミングで録音,マキシシングルのカップリングで頒布したものをMixし直したもの。
歌詞は人間を待ち続ける内にどんどん人間に近づいてゆくアンドロイドについて歌っている。
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アニソン的なコンパクトさが欲しくて、1コーラス90秒を目処に、なるべくキャッチーにすべく苦心した。
この曲を録ったあたりから4つ打ちビートと8ビートの混成にハマり始める。

 

星間寝台特急
 
「辞令(Intro)」で辞令を受けたゼーヴァは、星間寝台特急にて軍の後方基地カメリアへ出頭する!(乗車券は養育施設長からの厚意により入手)
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 Neodymで頒布したもののリミキシング・リマスタリング。Neodymのときよりだいぶ聴き易くなったと思う。
アルバム中でもかなり音の密度の高い部類の曲。
リズムではこれも4つ打ちビートを前面に出しているが、こちらは2バスの16ビートと絡めている。
4つ打ちビートと絡めると、16ビートは1バスと2バスのスピード感に明確な違いがあることがわかる。当然2バスの方がスピードを感じる。
それはそうと、寝台列車はロマンが有るけど実際乗ると酔うんだよねあれ。

 

天蓋の瞳
 
軍の警戒レーダーを操るオペレーターの一人、ヘンルーダ。宇宙空間に浮かぶ多数のレーダー(宇宙望遠鏡)で知覚を拡張し、近づく敵を見つけ出して迎撃する。神経をレーダーに直結するサイバネ手術によって不断不休の警戒態勢を実現した。対機械戦争の前線で人類の先頭に立っていながら、その非人間的な行動様式はヘンルーダの人間性を徐々に変質させてゆく。
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  少しホラーチックな雰囲気で、ダークで重く、それでいてキャッチーな曲。
コンセプトはヒンメルベットから着想を得ている。
この曲も一旦デモとして頒布したけど、そのときは時間的にVo.が間に合わなかった。今回キチンとucoさんに歌ってもらって、「やっぱりこれだよな~」と感動。また、音質に納得がいかなかったサイドギターは全て録り直した。

 

星屑邀撃機
 
戦闘機の曲その①。敵をひきつけては撃墜し、ひきつけては撃墜する、ヒコーキ乗り達の歌。この辺りの解説は以前頒布したペーパーにガッツリ書いた。いささか書き過ぎた。
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  この曲は基本的に以前頒布したときのテイクをそのまま使っている。但しMix作業は1からやり直した。演奏はともかく音質的にかなり苦労したがここまで持ってこられて良かった。

 

ホテル・テレスコープ
 
ゼーヴァが旅の途中で滞在した怪しげな移動宇宙ホテル「ホテル・テレスコープ」。客は金満なエグゼクティブばかりで、海千山千の金持ちが安らぎを求めてやって来る。ホテル住込みの歌姫マダム・ジャクリーンは独自製法のドラッグで客の心を溶かし、煌びやかな舞台と歌声で彼らの心と財布を掌握してしまう。彼女は機械文明によって作り出されたアンドロイドで、人間側に亡命してきたが受け入れ先が見つからず、成り行きで知り合ったホテル・テレスコープの支配人と恋に落ち、そのまま居ついてしまったのだ。
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この曲で何が起きているのかは書ききれない。ついカッとなってやりたい事全部やった。反省はしてる。この悪ふざけに真っ向から取り組んでくれたucoさんにはホント、頭が上がりません。

 

カタパルト
 
戦闘機の曲その②。こちらは”遠未来テクノロジーで作られた何かスゴイマシーンに乗って機械生命相手に超高速戦闘”をする曲。戦闘区域に向けて照準を合わせた”無反動カタパルト”にセットされた戦闘射出体。出撃を示す青い信号が灯り全構成粒子に同時に運動速度が与えられる。一瞬で亜光速まで加速された戦闘機は数天文単位先の戦闘宙域に突進するが、目の前で先行する味方機が爆散。その脇を通り抜け、爆炎と敵機を確認すると機体の限界に迫る速度で追撃。戦いに熱中するあまり、光速に近づいた機体の中は、時間と因果の法則があやふやに。それとも恐怖に混乱した頭が見せた唯の幻影?死を覚悟した瞬間を奇跡的に乗り越え、どうにか生きている。アドレナリンが滾り、思わずコックピット内で雄たけびを上げ、その後も活動限界まで敵機を狩り続け、勝利の帰還を果たす。
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餅月さんの美声が超越した世界感を響かせている。歌モノなんだけど非常に攻撃的な曲。どれだけツーバス踏みたかったんだか。音的にも迫力があって気に入っている。

 

未踏の空で
 
艱難辛苦の果てに、敵地中枢の惑星上空へと辿り着いたゼーヴァだったが、そこは地表へも宇宙へもアクセスの難しい、作りかけで廃棄された空中庭園だった。乗ってきた小型機は故障寸前。目の前に広がる景色はいままでの何より美しく、しかし状況は進む事を許さない。最後のフライトで味方の元へ戻れるのだろうか。
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以前頒布したものをリミキシング・リマスタリング、シーケンサで組んだものはかなり手を加えて音源の差し替えなども行った。
ヴォーカル、ピアノ、ストリングを主体に、休息と静かな決意を描く、落ち着いた雰囲気のバラード。


 

シラー・シベリカ
 
「シラー・シベリカ」は莫大なリソースをつぎ込んで作られた、希望の象徴的な儀礼艦。しかし人類側では戦闘に使える軍艦が減ってしまい、遂にシラー・シベリカにも出撃命令が下る。多大な犠牲と幸運の果てに、中枢惑星付近でゼーヴァを救助した同艦は、戦争終結への僅かな希望としてゼーヴァを人間代表とした和平交渉申し入れを補助する様指令が届く。ゼーヴァを乗せたポッドは大気圏内で分離し、機械代表との邂逅を図る一方、シラー・シベリカ本体は機械の攻撃からポッドを守りつつ、最後は囮として地表に墜落する・・・
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物語のクライマックスを描く、猪突猛進型のスピードメタル。
泣きの旋律、包み込む歌声、疾走するツーバス、でもネオクラシカルじゃない。非常に音が混んでいて、胃もたれする位内容たっぷり。

 

自動機械達の夜
 
地球を出発した移民船が、今作、前作、前々作の舞台である四季星系に辿り着くまでを描いたもの。
宇宙船を管理するAIの視点で描かれているが、AIの思考は人間の思考をなぞって作り出されたことで、人間的な感傷も再現されている。
詳細はペーパーに書いたので省略。
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14分超えの大作。ドキュメンタリー映画のノリ。歌を覚えるだけで相当のリソースが必要なので、餅月さんにはかなりの負担をかけてしまったが、声質的に大ハマリ。
構成的に幾つかのブロックから出来ていて、旅路での出来事を表している。
楽器類の録音はかなり初期の方でやっているので、ドラムの音作りは特に苦労した。

 

8つ目の海で
 
長い旅路の果て、苦しい戦いを経て、やっと辿り着いた新天地での記念式典を描いた曲。
地球の7つの海に続く、新しい星に出来上がった8番目の海の水上にて、人間と機械が再び手をとる記念すべき日の穏やかで希望に満ちた情景。
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この曲もメタルアルバムとしては明らかに異色。でもやりたかった。
ノスタルジーを書き立てる優しい世界。イメージ的にはなつかしの自然派動物系映画のエンディング。
現実の脅威とか、過酷な現実とか、政治的なあれこれとか、そういうのは脇に置いといて、ビバ自然(ナショジオ協賛)。

まー、この曲で描かれている星は、後の”廃棄惑星”なんですけど。

 





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