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燃えるからだとひきかえに

2011年5月発表 11曲収録



女性ヴォーカルでフルレンスのシンフォニックメタルをやる、という方針で2010年の1月から製作を開始したアルバム。
SFチックな音を極力排して、シンフォニックメタルの基礎であるギター、ベース、ドラム、ストリングスの絡みを掴むのが音作りの目標だった。
ヴォーカルとコーラスは、実力派UNIT「ヒメゴト。」のヴォーカリスト”uco”様にお願いしての製作。
SPARESPINE初のプレス作品。

収録曲:
01始まりの夜
02裏切りの灯火
03偽りの葬列
04決意の雫
05野薔薇
06剣と華
07騎士団
08悪魔憑き
09燃えるからだとひきかえに
10復讐の狼煙
11いつかこの空の下で

曲目解説

始まりの夜
  物語のプロローグ。
その昔、あるところにひとつの王国があった。
国は大きく幾つもの領地に分かれていて、それぞれの領地に領主が居り、国の中心にはそれらを束ねる国王がいた。
かつては戦争ばかりだった国に、なんとか平和が国に満ちてきたころのある夜、 欲に目の眩んだある領主の謀略によって、一人の子供がその命を奪われようとしていた。
轟く雷鳴と闇夜を切り裂く稲妻が去り、策謀の蠢いた夜が過ぎた後にも、朝はまた訪れる。
 

裏切りの灯火
  栄光と繁栄が国を満たす間にこそ腐敗は目に見えずそれを蝕む。
雨の降る月の無い夜、不穏な空気を感じ取って未明に目覚めた王女。物々しい雰囲気の中で王の寝室に向かうも、そこには既に事切れた両親が。
悲しみに暮れる間もなく、城のそこかしこから火の手が上がり、敵が迫る。
混乱の城内を逃げ回ってなんとか隠し通路に辿り着き難を逃れるも、泥まみれで逃げ延びたときには、今までの裕福な生活は闇夜に消えてしまっていた。
自分の家族と幸せと、権力を奪った憎い簒奪者に、彼女は雨の中で復讐を誓う。
 

偽りの葬列
  雨の中城から逃げ延び、何とか一夜を明かしたその翌日、縋る思いで忠臣のつてを頼って城下に近づいた王女は、鳴り響く弔いの鐘にを耳にする。
物乞いに身をやつし、人込みを掻き分けた先で見たのは、父たる王、母たる王妃と共に誰とも知らぬ、だが自分と背格好の似た他人が殺され、自分の代わりに弔われる現場だった。
 
[ 試聴する ]

決意の雫
  失意と恨みの中、味方を求めて旅を始めた王女はやがて、城の中では感じることの出来なかった自然の雄大さと細やかさに目をむけ始める。
空を覆う雲、降り注ぐ雨、木の葉から落ちる雫、再び覗く陽と空に架かる虹・・・
循環し巡り続ける自然を感じ、畏怖と静かな感動の中で王女は旅を続けてゆく
 

野薔薇
  砂漠に近い寂れた辺境
神の教えよりも包帯の方が重宝されるこの場所で、医師として戦う一人の尼僧。
寂れたその土地では、教会が学校、託児所、病院などの役割を果たしていた。
絶え間なく続く貧しさと疫病の波に晒されながら、ただひたすらそれに抗う日々。かつての戦で夫を亡くした彼女は、それでも現実という強大な敵に絶望的な戦いを挑み続ける。
 

剣と華
  人目、追っ手に怯えながらも前向きに旅を続けて来た王女も、幾多の街、村を無為にやり過ごす内に、その精神に陰鬱な影が落ちるようになる。
心は荒み、塞ぎ込んで俯いたままの旅が続き、やがて熱に浮かされた彼女は乾いた空気の吹き抜ける辺境の村で遂にその歩みを止めてしまう。
そして路地で絶望に身を任そうとした彼女を、一輪の野薔薇が拾い上げる。
 

騎士団
  かつて磐石だと思われていた王政の元、多くの栄光ある戦で誉れ高い名を馳せたものの、高まる名声と澱みゆく世情の間で戦いの大義に疑問を抱き、矛盾を抱えて現役を退いた男。
辺境の町の片隅で腐り堕ちて死を待つ彼の元に、一筋の光が鋭く差し込まれる。
王女の願いを受けて、一度は捨てた誇りを拾い上げ、折れた剣を再び取り、傷だらけの腕を掲げて男は最後の忠誠を誓った。
 

悪魔憑き
  都から遠く、打ち捨てられた古城。その奥深く。
冷たい壁に囲まれた部屋に幽閉された一人の娘。
世界から隔てられ、獣同然の扱いを受けて育った彼女こそ、かつて王女が産まれる前、雨の降るはじまりの夜に、策謀の蠢く城から逃げ延びた王女の姉だった。
肌を切り裂かれ、顔を焼かれながら逃げ延びた彼女は、巡り巡って権力欲の権化のような貴族に拾われた。
命を奪われかけた原因となった正にその血統こそが今や彼女を生かし、また鎖となって彼女をこの牢屋に縛り付けている。
悪魔憑きと忌み嫌われ、光に憧れ焦がれながら毒の食事を喰らい、王女の背に怨嗟の刃を振り下ろす為だけに、彼女は唯生きる。
 

燃えるからだとひきかえに
  王の死の真相を探る内、遂に悪魔憑きの娘が住まうという古城に辿り着いた王女。
古城の持ち主の貴族こそが、彼女の両親を殺した仇、憎き簒奪者だった。
旅はここで戦へと変わる。
王女側の不意をついて一時は優勢に立った貴族の男が、数に押されて討ち取られたその時、悪魔憑きの娘が名乗りを上げて戦場に突入する。
一直線に王女の首をめがけて突進し、その体に掴みかかる悪魔憑きの娘。
同じ顔をした二人が、怒号と剣戟の中で獣のように殺し合う内に、どちらの側が放ったのか、やがて城は炎に包まれた。
遂に崩れ落ちる瓦礫にさえぎられ、王女と悪魔憑きの娘は戦場の誰彼からも隔絶される。
双方の炎と煙と呻きと共に古城の跡は夜を過ごし、そして朝が訪れる。
 

復讐の狼煙
  降り始めた雪によって炎の静まった古城の焼け跡。瓦礫を押しのけて立ち上がった傷だらけの娘に兵士が駆け寄る。
しかし、それが二人のどちらなのか、誰一人区別出来る者は居ない。
かたくなに口を閉ざす彼女は、王女かそれとも悪魔憑きか・・・
困惑の満ちた沈黙の中で一人の騎士が静かに傅く。
しんしんと降り積もる雪の中、一人、また一人と頭を垂れ、やがてその場の全てが彼女に忠誠を誓った。
ここに王女は復活し、悪魔憑きの娘は再び消え去る。
古城跡を発った一行は各地を巡りながら徐々に勢力を増強し、遂に因縁の都へ。
兵は緩む事のない怒涛の勢いで街を抜け、城に攻め上る。
王女の兵は城内の情けない程の僅かな抵抗をひねり潰し、瞬く間に城は陥落する。
寝巻き姿で逃げ出した王女は、抜き身の剣を握って帰還し、城門をくぐったその日の内に王座を奪還したのだった。
翌日、兵と民は共に再び城に王を戴くこととなる。
しかし、数日のうちに王女は姿を消した。
まつりごとを親しい側近に明け渡して。
 

いつかこの空の下で
  かつて死闘を繰り広げた古城跡。その傍らの、誰からも忘れ去られた様な質素な墓標に、彼女は花を手向ける。
都への帰還から数年。この墓に花を添えるのが、俗世から離れた生活の中で唯一つの旅の行事だった。
立ち上がって膝を払い、顔を上げる。空は既に茜に染まり、初冬を告げる風が襟を直させる。
林の向こう、丘の下の村に灯る明かりを見るともなく見つめていると、やがて風に乗って歌声が響いてくる。
その日は収穫を祝う祭りの日だった。因果の絡まった道行だったが、季節はまた巡るのだろう。
今年は寄って行こうか・・・
 





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